残照身辺雑記

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読書雑記帳 (6)ビッグバン宇宙論(上・下)/サイモン・シン

サイモン・シン著「ビッグバン宇宙論」を読んだ。素晴らしい内容でおススメです!誰もが知っている「ビッグバン宇宙論」。それが確立されるまでの歴史と背景にある理論が分かり易く説明されています。

 

ビッグバン宇宙論(上・下)/サイモン・シン青木薫訳)/発行2006 新潮社(原著刊2004)なお現在は書名が「宇宙創成(上・下)」に変更されている

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著者は、「ビッグバン宇宙論」について、「人類は幾千代にもわたって空を見上げて、その不思議に思いを巡らせてきたが、我々の世代になって初めて、宇宙の創造と進化について、かなり満足のいく、合理的で首尾一貫した説明ができるという栄誉に浴することになった。

ビッグバン・モデルは、夜空に見えるものすべての起源をエレガントに説明する。人間の知性と精神が成し遂げた最も偉大な成果の一つである。それは、好奇心と創造力、そして細心の観察と厳格な論理から生み出された。

素晴らしいことに、ビッグバン・モデルは、誰にでも理解できるシンプルさと美しさを備えている。しかしそこには過去2千年の間に粘り強く築かれてきた天空に関する理論や観測が組み込まれている。」と述べている。「神話」から始まって、「宗教」との確執と克服、そして近代科学としての「ビッグバン・モデル」の確立に至る天文学の歴史が語られる。

ビッグバン宇宙論は、実は、私にとっても不思議な因縁があり、特別な関心がある。というのは、ビッグバン宇宙論の成立に貢献があったとされる資産家にしてアマチュア天文学者パーシヴァル・ローウエルが、なんと120年前の1898年(明治22年)5月に私の生家を訪れ宿泊したというのである。その訪問の様子を以下の記事にアップしている。ということで、本書の中での彼がどのように登場するのかをも期待しながら読み進めることになった。 afterglow0315.hatenadiary.jp

本書では、ローウエル天文台ヴェスト・スライファーが行った観測のことが詳しく述べられている。彼は、銀河の星雲のドップラー遷移を初めて測定し、多くの銀河が大きな後退速度を持つことを発見した。この現象を説明しようとする試みがのちに膨張宇宙論に繋がることになった。スライファーはビッグバンの証拠となる決定的な観測を行ったことになる。他方、ローウエルは火星に文明の存在を求めて観測に熱中したという。

観測の舞台となった 天文台は、ローウェルが、私財を投じて1894年アリゾナ州フラッグスタッフに設立したもので、その建設は、彼が私の生家を訪れた1889年から5年後のことであった。

ローウエルとスライファーのビッグバン理論への貢献の偉大さに比べて、彼等への評価の小ささが気になる。このあたりのいきさつを論じた「膨張宇宙の発見. ハッブルの影に消えた天文学者たち/マーシャ・バトゥーシャク 著」という本があることを知った。早速読んでみることにしよう。

ビッグバン・モデルに触れた者は、誰しも、ビッグバン以前の宇宙はどうだったのか、また、ビッグバンの行き着く先はどうなのかを知りたいと思うだろう。本書ではいくつかの仮説レベルとされるモデルが紹介されている。天文学は、「理論」と「観測」と「計算」が補完協同しあって、宇宙のなぞを解き明かしてきた。いつの日か天地創造の謎をも解き明かすのだろうか。