残照身辺雑記

日々の出来ごとや感じたことなどのあれこれを記録します。

読書雑記帳 (7)膨張宇宙の発見/M.バトゥーシャク著

20世紀の初頭までは、宇宙は、即ち「天の川銀河」であるとされていた。W.ハーシェルは、恒星の位置や明るさを観測して、天の川銀河の星々は、円盤状に集合した構造をしており、太陽がほぼその中心に位置していることを示した。1800年頃にハーシェルが描いたこのモデルが、以来、宇宙を表すものと考えられてきた。

しかし、1920年代になると、「島宇宙」や「膨張宇宙」などの発見が相次ぎ、天の川銀河を超えて遥かに広がる新たな宇宙の姿が明らかになった。宇宙の理解は根本的に転換することになった。

 膨張宇宙の発見/M・バトゥーシャク(長沢・永山訳)/発行2011 地人書館(原著刊2009)

本書では、現代の宇宙論がどのようにして構築されたのか、「島宇宙の発見」や「膨張宇宙の発見」をはじめとする天文学上のイベントが詳しく解説される。

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 誰が何を如何にして発見したのか。誰がどのようにして理論を確立したのか。興味は尽きない。

幸運と不運、苦闘と確執。熾烈な競争と論争。科学者たちの人間ドラマが展開される。

<豆知識>宇宙の大きさは・・?

我々が見上げる天の川銀河は、2,000~4,000億個の恒星が渦巻き状に集合して、中心部が少し厚く膨れた平らな円盤状を成しているという。

円盤の直径は約8~10万光年。厚さは1,000光年。太陽系はこの円盤の中心から約3万光年の場所に位置している。

太陽系は約5,000個の星から成っているので、天の川銀河は凡そ2,000~4,000億×5,000個=1,000~2,000兆個の星から成っていることになる。

そして、宇宙には、天の川銀河のような銀河が、観測可能な宇宙の範囲だけでも、2兆個は存在すると推定されるという。想像を超える宇宙の大きさである。では宇宙の大きさはどれくらいなのだろうか?

(以下「最新宇宙論物語」等からの私的要約)ビッグバン宇宙論によれば、微小域として始まった我々の宇宙は、以来、膨張を続けて、生誕138億年の現在、その大きさは、我々を中心とする約464億光年(≒138億光年+138億年の間に延ばされた分に相当する距離)の半径の球になるという。これが光速からくる観測限界であり、観測可能な宇宙の大きさということである。

但し、ここでいう我々の宇宙とはビッグバンによって形成された宇宙である。その外側にも勿論空間は存在する。我々のビッグバン宇宙が、さらに膨張を続けるとすれば、必要とされる空間である。膨張の結果その空間は我々の宇宙になるであろう。

この外側の広がり、即ち、空間的な宇宙の大きさ、は数千兆光年とも言われるが、観測技術の進化によって、ある程度のことを科学的に言うことができるという。観測成果に基づいて、かなり自信を持って言えるのは、「ずっと大きな領域まで広がっている」ということであるという。結局のところ「大きさは果てしない」ということになるのだろうか。取あえずは「宇宙の空間的な大きさには定説はない」としておこう。