残照身辺雑記

日々の出来ごとや感じたことなどのあれこれを記録します。

読書

永田和宏著「あの胸が岬のように遠かった」のこと

ブログの更新が50日も滞っている。自分としてはこのままフェイドアウトにするつもりはない。理由は極度の繁忙のためで、なかなか記事を書く気分にはなれないでいる。この年にして”仕事上の繁忙”である。有難いというべきか? 今朝の新聞の書評欄に「あの胸が…

晩春の味覚 京都西山大枝の京タケノコ

春は足早というが、4月は早や月末。芽吹きの色にぼんやりと笑っていた山は、すっかり鮮やかな緑に変わった。若葉の山々は夏を迎える気配に満ちている。 ブログ記事の更新が途切れている。何とか繋がねばとPCに向かう。ネタがない訳ではない。桜のこと、ワラ…

読書雑記帳 (14)罪と罰/ドストエフスキー(江川卓訳・岩波文庫)ウクライナ侵攻の日に

「罪と罰」を読み終えて日にちが経ってしまった。忘れないうちにと感想を書き始めた途端に、ロシアのウクライナ侵攻である。大国と指導者。政治体制と歴史感。地政と経済。諸々が孕むものの重大性・危険性を改めて思い知らされた。マグマは、時として正当化…

読書雑記帳 (13)豊饒の海  春の雪・奔馬・暁の寺・天人五衰(新潮文庫 全四巻)/ 三島由紀夫

「豊饒の海」を読んだ。年末年始にゆっくりと長大作をが動機。たまたま図書館で"宝塚歌劇団で舞台化された文学作品"という特設のコーナーをやっていて、「赤と黒」「戦争と平和」「嵐が丘」「アンナ・カレーニナ」などと一緒に「豊饒の海」全4巻が並べられ…

読書雑記帳 (12)人新世の「資本論」 斎藤幸平著(集英社新書)

「人新世の『資本論』」を読んだ。30万部超という話題の書である。経済・哲学・思想系の堅くて難しそうな書物がベストセラー!何故だろう?図書館に入っていたので、2か月待ちだが、興味本位で予約した。多分歯が立たない・・。読んで損はないだろう。 地球…

読書雑記帳 (11)日の名残り/カズオ・イシグロ

「日の名残り」を読んだ。ノーベル賞作家カズオ・イシグロの代表作である。それにしても気になるタイトルである。原題は"The Remains of the Day"。美しくかつ意味深長・・。それは一日の終わりのことなのか、はたまた人生の終章のことなのか?作家は何を語…

読書雑記帳 (10)アンナ・カレーニナ/トルストイ(木村浩訳)/新潮文庫 

ロシア文学をすすめられた。カラマーゾフというが、ハードルが高そう。それで、先ずは、トルストイからにした。図書館は入館停止が続いて、貸し出しは、伝票での依頼と窓口での手渡しのリモートである。本選びもままならない。 書物や書物や文章の冒頭にある…

読書雑記帳 (9)夜明け前(第一部・第二部)/島崎藤村

「木曽路はすべて山の中である。」の書き出しが余りにも有名な島崎藤村の"夜明け前"。一部・二部各上下合わせて文庫本4冊の長編であるが、-息を継ぐ間もなく、頁をめくるのがもどかしい-の形容が大げさでない夢心地のままに読了した。とても素晴らしか…

読書雑記帳 (8)嵐が丘/エミリー・ブロンテ

エミリー・ブロンテの「嵐が丘」を読んだ。モームが世界十大小説に選んでいる超有名作品。魅力的なタイトルに誘われて読み始めたのだが、噛み応え十分、ブロンテが自在に繰りだす愛と復讐の世界に翻弄されることになった。 イングランド北部ヨークシャー地方…

読書雑記帳 (7)膨張宇宙の発見/M.バトゥーシャク著

20世紀の初頭までは、宇宙は、即ち「天の川銀河」であるとされていた。W.ハーシェルは、恒星の位置や明るさを観測して、天の川銀河の星々は、円盤状に集合した構造をしており、太陽がほぼその中心に位置していることを示した。1800年頃にハーシェルが描い…

読書雑記帳 (6)ビッグバン宇宙論(上・下)/サイモン・シン

サイモン・シン著「ビッグバン宇宙論」を読んだ。素晴らしい内容でおススメです!誰もが知っている「ビッグバン宇宙論」。それが確立されるまでの歴史と背景にある理論が分かり易く説明されています。 ビッグバン宇宙論(上・下)/サイモン・シン(青木薫訳…

読書雑記帳 (5)誰もが楽しく有益に読むことができる書物とは・・/読書案内・世界の十大小説・月と六ペンス・人間の絆/W.サマセット・モーム

サマセット・モームが「読書案内(BOOKS AND YOU 1940)」の中で、この本を書いた理由を、「過去の文学者たちの偉大な遺産を前に途方にくれている一般読者のため に、誰もが、楽しく、かつ有益に読むことができるような、書物のリストを提供することにあった…

読書雑記帳 (4)蛍川・青が散る/宮本輝

人気の作家宮本輝。小説の類は苦手の小生ですが、流石にいくつかは読んでいる。「蛍川」と「青が散る」は特に印象深い作品です。「蛍川」は私のふるさと富山が舞台。「青が散る」は自分も経験した学生時代の運動部が舞台。ということでとても身近に感じる2…

読書雑記帳 (3)葬送・日蝕・マチネの終わりに/平野啓一郎

難解と聞く平野啓一郎さんの著作です。三冊を図書館に予約。どんな内容?難解とは?読書新参者には興味深々です。 「ページをめくる手が止まらない」小説ではなく、「ページをめくりたいけどめくりたくない、ずっとその世界に浸りきっていたい」小説。その中…

読書雑記帳 (2)怒りの葡萄・赤い月・夜と霧

私が利用している図書館です。自宅から徒歩5分で便利です。読書雑記帳は、独断と超理解による、自分のための、備忘印象メモです:Just to be sure! 「怒りの葡萄」「赤い月」「夜と霧」は、図書館が年末年始の長期休館になるので纏めて借りた本の中の3冊…

読書雑記帳 (1)ニューノーマル

読書の時間が急増した。 Covid-19の出現によって、当たり前であった日常が、ウイルスとの隔離性という、思いもよらない視点で選別されることになった。不都合なものは排斥され、そうでないものは維持・選好される。かくして新たな日常「ニューノーマル」が生…

卑弥呼の都への水行陸行 続編(10) 芥川賞作家の邪馬台国論

このブログの記事『卑弥呼の都への水行陸行(1)~(9)』を読んだ知人が、"芥川賞作家の高城修三さんにこんな著書があるよ"と「大和は邪馬台国である」(1998 高城修三著 東方出版)という本を送ってくれた。 芥川賞作家の邪馬台国論といえば松本清張の…

みうらじゅん著「マイ仏教」感想 「じぶん念仏」と「幸せな走馬燈」作りは如何ですか?

先日、"みうらじゅん最後の講義"というNHK BSのドキュメンタリー番組を見ました。たまたまの視聴だったのですが、思いがけず素晴らしい内容で、ラッキー‼でした。それで氏の著書「マイ仏教」を読むことにした。 番組"最後の講義"は、各界の著名人が"最…

「Google誕生」を読み終えた  "最強の検索エンジン"と"巨大企業Google"と"ネット検索基礎知識"の話し

「Google誕生」をようやく読み終えた。スタンフォード大学で出会った同級生、L.ページとS.プリンが、検索エンジン"Google"を生み出し、その技術を足掛かりに、巨大企業「Google」Inc.を育て上げるまでの物語です。500頁の大著ですが、同時代的に進行した…

読書感想 "ホモ・デウス (上) (下)"Y.N.ハラリ著  世の中何か納得できないなあ--と感じている人に

世界的ベストセラー「サピエンス全史」の続編 "ホモ・デウス"を読んだ。「全史」の方は読んでいないが、続編だけでも、内容は人類の過去から始まって未来が語られているので大丈夫。ただ「全史」もそのうち読んでみようという気にはなった。 本書は、人類…

手作りラジオでBCLに熱中    昔のBCLと天国に一番近い島   

以前"BCL"のことを書いたことがある。海外の放送局の受信を楽しむという今や絶滅危惧種かとも思われる趣味のことである。遠い昔の1950年代に自分が熱中していたBCLの話を、珍しい昔話になるかと、少し書き直して、UPすることにした。 最近のBCL事情を調べ…

130年のタイムスリップ パーシバル・ローエルが訪れた名水の里黒部市三日市

16年前に書いた文章がUSBに残っていたので少し書き直してこちらへUpした。同級会で自分史的な文集を作ろうとの趣旨だったので、記録の意識もあって、中身が少々冗長です。生家は数年前に建て替えられてしまって、私が過ごしたころの面影は今は全くない。この…

最初の記憶のこと  「敗北を抱きしめて」ジョン・ダワー を読んだ

(2018.02.04.にUpした記事を修正) 白い粉塵の中で黒い機械が轟音を響かせている。息苦しさと騒音の中でその場所の過酷さを感じていた。最初の記憶は何だろうと考えるとこの光景が浮かぶ。母に連れられて姉を学徒動員先の紡績工場へ慰問した時のことという…