残照身辺雑記

日々の出来ごとや感じたことなどのあれこれを記録します。

人の元気さ具合は歩く速さで判るという  ~「歩行速度」と「平均余命」の関係~ 

起床するなり、気になるサクランボの木を見ると、防鳥ネットが外されている。聞けばヒヨドリたちがネットの隙間から出入りして、実はすっかり食べてしまったとのこと。危険がないと見破られてしまったのだ。収穫はほとんどなくなった。

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二人がかりでも仕掛けるのが大変だった防鳥ネットだが、妻は一人で片付けたらしい。

その上、脚立に乗って剪定を始めている。

来年はネットがすっぽり掛るように枝を切るという。

元気さに感心しながら「元気だね。大丈夫か」と声をかけると、

「年を取ったとか、体力が衰えたとか、最近よく言うようになったね。気持ちが元気でないと身体も元気でなくなるよ。」と返ってきた。

自分では元気なつもりでも、外から見ればどうなのだろう、元気の具合を測定することはできないものだろうか。気になるところだ。

「フレイル」という言葉をよく目にする。外国の老年医学の分野で、高齢者の健康の度合いを示す用語として用いられる「Frailty」(=直訳すれば「虚弱」や「老衰」、「脆弱」など)が、そのまま日本でも用いられるようになったという。

厚労省によれば、「フレイル」とは「健康と要介護の中間の状態のことで、適切に対応すれば、生活機能の維持向上が可能な状態」と定義している(厚労省研究班)。しかし、その判定についての具体的な基準は示めされていない。

「フレイル」の基準として良く紹介される例は、海外の研究者によるもので、次の5項目の内の3項目が適合すれば「フレイル」と判定するというものがある。

(1)体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
(2)疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
(3)歩行速度の低下 (4)握力の低下 (5)身体活動量の低下

要介護寸前のものを「フレイル」と判定して、指導・改善につなげるには役立つかもしれない。しかし「フレイル 度」といった定量性はなさそうである。

「歩行速度の低下」という判定項目が気になった。Walkingは長年続けているが、大概の人には追い抜かれるし、以前よりも時間がかかるようになった気もする。歩行の衰えが気になっているのだ。それで「歩行速度」について調べてみた。

加齢による心身機能の衰えが「歩行速度」に反映されるという研究がされている。年齢毎の標準的な歩行速度が判れば、これと比較することで、加齢の程度が判定できる。二つの研究レポートを見つけたので、自分の「歩行速度」について調べてみた。

【第一】は平均的な歩行速度の調査結果についての"横浜市スポーツ医科学センター"によるレポートです。下図は同レポートにある男性についてのデータを加工して作った図表です。年齢と共に歩行速度が低下しています。これと比べれば自分の歩行速度がどの年齢レベルなのかが判ります。

 

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私のWalkingのデータは次の通り;

  歩行距離:1,970m(片道、標高差42mの緩やかな登り)

  所要時間:30.0分  歩行速度:1970÷30=65.7m/min=1.10m/sec

これを上の図表に当てはめると、歩行速度から見た私の年齢は、約66歳ということになります。実年齢は80歳なので随分若いことになる。歩行速度は遅いと思っていたので意外な結果でした。

 

【第二】は「高齢者における歩行速度と余命」というそのものずばりの論文です。JAMA(米国医師会雑誌)という権威ある学会誌に掲載された論文です。

65歳以上の高齢者約3万5千人を対象に、最長21年間の追跡調査の結果、「歩行速度」と「平均余命」に相関関係があることが判ったとする論文です。結論となるグラフを引用すると次の通りです;

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80歳で歩行速度1.10m/sec(65.7m/min)という私のデータをこのグラフに当てはめると、平均余命は8.5歳という結果が得られます。同年齢の間でも、歩行速度が1.6m/sec(96m/min)と早い者は平均余命14年、遅い者では5年以下と大きな差があることが示されています。

論文は米国男性についてのものなので、体格差と歩行速度や平均寿命の差など、補正を要する点がありそうです。ただ厚労省が発表している平成29年簡易生命表では、80歳男性の平均余命は8.95歳です。なので大きくずれている訳ではありません。

気にしていた自分の歩行速度は、平均的であることが判って一安心。加齢と歩行は密接に関係しているという。颯爽と歩く姿は若さの象徴でしょう。元気な歩行を保ちたいものです。それは気持ちと心がけ次第。意識することにしよう。